建築デザイナー「本間大吉先生」×家相
本間大吉(ほんま・だいきち)
- 1976年 新潟県生まれ、工学院大学大学院卒業
- 岡田哲史建築設計事務所勤務、2011年 本間大吉設計事務所設立
敷地や周辺環境を読み解き、その土地にそった建物を考える。クライアントとの打合せは納得のいくまで重ね、方向性を共有する事を大切にしている。
時が経ても色あせない輝きをもったもの又は使い続けていくことの出来る建築を目指す。デザインのスタイルはシンプルで飽きのこない、普遍的な美しさを追求。出来るだけ少ない要素で空間を構成するミニマルなデザインを目指している。シンプルな空間を実現するため、特にディテールには拘りをもって設計にあたる。ただ美しいだけでなく、実用性も兼ね備えたものが重要。素材感も重要視したい一つで、本物であることに拘りたい。シンプルであることは素材を引き立てることにもつながると考える。
本間先生×佐藤秀海 家相建築対談
当社代表の佐藤秀海が家相を監修し、デザインを建築デザイナーの本間大吉先生が担当するというコラボレーションによって、吉相でデザイン性の高い美しい住宅が誕生しました。
初めて家相家とタッグを組んだという本間先生に、家相設計に携わった感想について伺いました。
今回、本間先生に出会ったことで、デザイン性に優れ、満足度の高い家が完成しました。実際に家相を採り入れた家づくりに携わっていただいて、いかがでしたか?
施主のご主人はデザインにこだわり、奥様は家相を重視したいという中で、正直、家相とデザインが相入れないと思うことがありました。家相を採り入れることは、設計面で1つ条件が増え、設計上の難易度が上がるわけですが、僕自身はそれが個性になればいいなと思いました。設計したお宅はビルトインガレージを設けたいという意向でしたが、家相的には出来ないということで、車庫の建物を別棟にして、車を自宅から絵画のように眺めて楽しめるという手法を考えました。結果として面白い家が出来たと思っています。
でも家相という制約がなかったら、もっとこうしたかった…と思う点があったことでしょうね。
そうですね。施主さんからの希望もあり、当初外構を建物二層分くらいの高さにしようと思っていたのですが、家相上の制限もあり、壁の高さを調整しました。結果的にプライバシーを確保しながらも、建物前にある公園を感じ、広がりのある住まいが実現できました。
家相では家の周りの塀や外構がとても大事なのです。外構の高さは1,200mmくらいが良いとされています。人がまたげないくらいの高さがベストで、高すぎる囲いは良くない。空気がうまく流れていて、それでいて適切な結界が必要なのですね。実際には高い塀が好きという人も多いのでしょうけど。
そうですね。隣の家さえ見たくない。見えるものは空だけにして欲しいという施主さんもいらっしゃいますね。
そういう点では、やっぱり家相が入るとやりにくくはないですか?
でも実際に携わってみて、結構家相って柔軟なのだなと感じるようになりました。例えばトイレはこの範囲に3分の1だけでも入っていれば良いといったようにね。
それでも自由度が失われた点もありましたか?
僕の家づくりの基本はシンプルな家です。さらに施主には予算もありますから、コンパクトにまとめなくてはいけないことも多いのです。家相で欠けを作らないということにも通じている点もあり、逆に良い相乗効果になったと思っています。
今回のプロジェクトでは、別棟を配置してステキなデザインの家になりました。僕が平面プランを作りましたが、それをどう形にするのかが実はとても重要なのです。本間先生がデザインしてくださったおかげで、いろいろな可能性を引き出し、シンプルでデザイン性に優れた家になりました。
「シンプルな家は、実はかっこいい家だと思う…」
僕が他の人と差別化できる点があるとしたら、見せ方だと思っています。いかにディテールにこだわって、いかに余計なものを見せないようにするか…。空間を”純化“するといったら良いかもしれません。
そういう意味では、家相も家の形を複雑にしない。どちらかというとシンプルですから、先生のデザインと合致する部分があるのかもしれませんね。
ちなみに家相で良くないとされるものに、家の中心に配置した階段があります。先生の間取りでは階段の位置などにこだわりはありますか?
ちなみに家相で良くないとされるものに、家の中心に配置した階段があります。先生の間取りでは階段の位置などにこだわりはありますか?
僕は家を合理的に説くタイプなので、階段は端に寄ることが多いですね。
それは嬉しいですね。先生の家づくりは、しっかりスペースが確保されていて、コートデザインと融合するところが良いと思います。吹き抜けはどうですか?
吹き抜けは好きで良く採り入れます。リビング全体が吹き抜けているといった家もあり、吹き抜けがあると空間の面白さが出せると感じています。家相ではあまり良くないのですね?
本来家相には吹き抜けの概念がないんですね。もともと家は平家建てで、2階も後から出来た概念です。家相は建物の構えを大切にするので、吹き抜けは立体的な欠けとみなします。ですから家の真ん中に階段があって、そこが大きく吹き抜けているという間取りが一番良くないパターン。でも都心の住宅ではそうもいかないので、致命傷にならないように吹き抜けを作って採光を確保し、少しでも快適な家にしたいと思っています。
では逆に出っ張りは構わないのですか?
縦横方向に対して3分の1までは張りを出せるのですが、あまり大きくは張り出せないですね。もともとの形を決めて、その中でうまく振り分けていくのが家相の考え方。家相には制約があり、決められた中でどこまで出来るかが腕の見せどころなのです。
色についてはいかがですか? 最近はお洒落に感じるのか黒を好む人も多いですね。白は汚れやすいといって避ける人もいますが、僕は家の内装は基本的に白い壁、白い天井ですね。住まい手の方が住み始めて、絵画や植栽などを持ちこんだ時に初めて家が完成すると考えています。ですから内装もいろいろな素材を使って主張し過ぎないように気をつけています。外壁も同様です。
僕自身は色にこだわりたいですが、周りとの調和もあり、あまり目立たないほうが良いかなと思ってしまいます。そうするとつまらない家と言われる…。
でもシンプルに作ると、逆にかっこいいと思いますね。
そうかもしれませんね。シンプルということではないけれど、高気密高断熱が進んで、家の中の間仕切りがなくなる傾向がありますが、その点はいかがですか?
マンションはすでにその傾向があり、リノベーションプランだとワンルームに近い形の家もありますね。それはそれで魅力的だと思うのですが、実際には寝室まで1つの空間にすると、住みにくいのではないかと思っています。
家相には陰と陽という考えがあります。きれいにするところと、汚くしても良いところがあるという考え方です。例えば鬼門は不浄でエネルギーが低いところですが、逆にエネルギーが高いところもある。家の中にはそれらが混在しているので、あまりオープンにするのはどうなのかと思いますね。全部日当たりの良い部屋ばかりだと、ゆっくり休めるところがないと思いませんか?
確かにデザインが良くても、使い勝手が悪ければ意味がないと思いますね。
細かいディテールにこだわって、すべてを完璧にしようとすると、デザイン的には良くても、逆に不自由な感じがするでしょうね。ここは見せたいからステキにするけど、ここは寝るだけだからまあいいか、といった考え方のほうが落ち着くような気がしますね。
実際には一切妥協しない、妥協するのは収納の中だけ、という例もありますけどね。
「家相もデザイン性も良い、そして機能性も高い家を一緒に提案していきたい…」
家相は目に見えない部分の影響を考えるので、当然素材というものも影響があります。触って気持ちの良いことが大事ですね。気持ちが良い、寛げる家というのが原点だと思います。本間先生がこれから家を設計するときに、施主から家相を気にしますと言われたらどうしますか?
施主さんのご希望なら家相を入れてもいいと思っています。
僕は家を建ててから後悔する人が多いように感じています。予算もあるし、ある程度妥協して家を作ることが多いと思いますが、その中で後悔するのが家相ではないかと思っているんです。家相は転ばぬ先の杖として使ってほしい。家を設計する時に、家相は気になりますか? と訪ねて、気になると答えたら、では家相を入れたらこういう家が出来ますよ、と提案できる流れを作りたいというのが僕の理想なのです。
そうですね。施主さんに聞いてみたいと思いますね。でも気にし始めたら本格的にやらなくてはいけないと思うので、施主さんを困らせることになってしまうのかなという不安もあります。
家相は気になるけど、かっこいい家を作りたいという人も多いと思います。その時、どちらかひとつという選択肢ではなく、家相も良くてデザインも良い、機能性も良いという家を提案できないと、家相の考え方は広がっていかないと考えています。
こんなことが出来る!こんなステキな家が出来る!ということを、先生にもぜひ発信していただきたいと思います。ちょっと工夫すればこんな風にステキな家が出来るということを見せるのが、プロのセンスだと思っています。
こんなことが出来る!こんなステキな家が出来る!ということを、先生にもぜひ発信していただきたいと思います。ちょっと工夫すればこんな風にステキな家が出来るということを見せるのが、プロのセンスだと思っています。
建物だけの表現だけでなく、自分を表現することも大切ということですね。
施主の思いを実現する能力が我々にはあると思っています。施主がどうしたいのかを感じとって、提案してあげる能力が大切。一生懸命家を建てたのに、自分が思っていた家とは違ったものになったら悲しいじゃないですか。ぜひその思いを一緒に形にしてあげようじゃありませんか。
施主さんの要望にひとつひとつきちんと答えていくと、心から喜んでいただける家が出来るんだということを、今回ご一緒に仕事させていただいて実感しました。周辺環境を読み説いて家を作るということは確かに大切なのですが、施主の話をたくさん聞いて、議論を重ねて出来あがって行く家が、本当に満足していただける家なのだとつくづく思いました。
本間先生は私の図面と施主さんの思いを形にしてくださいました。そこには感性が合致したということもあるのかもしれません。家づくりはひとつの縁でもあります。本間先生のすばらしいデザイン力とこれからもタッグを組んで、安心して住み続けられる家、デザイン的にもお洒落ですっきりと暮らせる家を提案できれば嬉しいですね。
ぜひよろしくお願いいたします。